愛は惜しみなく与う③

「本気で殴り飛ばしてやるつもりで、殴りかかったんですが。受け止められてしまいましたし。
杏様にぶつからないように踏ん張っていたのも、分かりました。

こんな時でも冷静なのは、とても凄いことです」


上から客観的に評価をされる。
ムカつくとかそういう感情は、今はない。
ただこの場がどうなって行くのか…それが不安だ



「ですが、杏様は連れて帰ります。東堂にいるよりも、こちらがマシだと思ったんで、杏様をこちらに送ったんです。
でも、今のままでしたら東堂に居る方が安全だと思います」


「…杏は嫌がるだろ?戻るの」


「そりゃ、殴られてブチギレられる覚悟はしていますよ?」

それで済むなら、痛くも痒くもありません
そう言ってニコリと笑った


「私は嫌われてもいいんです。杏様に嫌がられてもいいんです。むしろ、嫌いになってサトルくらい憎んでくれてもいいんです。

そしたら、俺は、杏の中でずっと生きれるから」



志木さんは、後半話し方が変わった。自分のことを『俺』と言って、杏様ではなく、『杏』と呼んだ
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