愛は惜しみなく与う③


「だから、杏の意志で帰ると言わない限り、俺はあなたが杏を連れて行くことを拒否する」



足を止めて振り返りながら、しっかりと俺の目を見つめる志木さんは

また元の場所に戻り、杏をベッドに下ろした



「覚悟が違うと思いませんでしたか?」

「うん、思った。俺らの守りたいって気持ちとは、比べ物にはならないんだろうなって思ったよ」


でも…


「守りたいって気持ちは同じだろ?杏に笑顔でいてほしい。あなたがサトルを殺して、すべての原因を潰していったとして…

杏は笑顔になれるのか?」


「……」


俺はそうは思わないんだよ。
長谷川の時もそうだったけど、杏はとても優しくて、友達思いで仲間思い。

疑ったり疑心感を覚えても


どうにかして、いい方向に持っていけないかと考える子なんだ



「妹さんの事件を俺は、全部知らない。あなたは近くで見ているから、殺してしまいたいと思うんだろう。俺もこの前思った。
杏に手を出した水瀬を殺してしまいたいと思った。

でも……そうするのは、自分のためなんじゃないのか?」

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