愛は惜しみなく与う③
俺はあの時、頭に血が昇り
水瀬を殺してしまいたいと思った。
恨みや憎しみで湧き上がった感情だ。

とても暗くて汚なくてドロドロした感情



「杏は、殺したいくらい、憎んでいると思う。杏が知らないところで、昔から計画されていたとしたら、すべての真相を知れば、もっと恨むと思う。
だからと言って、殺してしまったら意味がない。
サトルを殺してもきっと、杏の気持ちは晴れない。これは確実に。」



「……気持ちは晴れますよ」


「それは、あなたの気持ちが晴れるんだ。守れなかった俺たちの気持ちが…少し軽くなるだけだ」


「なかなか、言ってくれますね。穏便に済まそうとしていましたが、力づくでいきましょうか?
これでも薔薇の副総長でした。あなたの力は知りませんが、負ける気もしませんし」


スーツの上着を脱いで、近くの椅子にかけた

こうなるとは思ったけど

ここでの争いも無意味だ




「俺は、杏が笑顔でこれからも過ごせるようにしてあげたい」


「綺麗事ですね」

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