愛は惜しみなく与う③
「……あなたの気持ちは私には関係ありません。構えなさい。力づくで、杏様を連れて帰りますので」
ふぅ。こうなるか
気持ちは関係なくても、俺の考えを聞いてもらえただけで十分だよ。
「俺も、譲れないものはある」
朔に下がれと言い、志木さんの前に立つ
威圧感 殺気
それがすべて自分に注がれているのがわかる。
久しぶりだよ、こんな感覚は
「10秒で沈めてあげましょう」
志木さんの声と共に、拳が飛んでくる
避ける暇はない
俺も力一杯ぶつけるだけだから
当たる覚悟で手を伸ばした時
俺の拳と志木さんの拳は、小さな手に止められた
「目覚め悪いなぁ。あんたら何しとんねん」
杏が俺らの拳を片手ずつで止めて、間に入ってきた。
茫然と立ち尽くしていたら、目の前の志木さんが、病室の扉の方まで飛んでいく
え?
「あんた今、泉のこと本気で殴ろうとしてたやろ」
片足で杏が志木さんを蹴った。
そして志木さんはそれをノーガード。
絶対ガードできたのに