愛は惜しみなく与う③

「…すみません。彼も本気だったので」

「アホやろ。泉は喧嘩の中の本気や。でもあんたのは、人を傷つけるための本気の拳やった」


頭痛い…
そう言ってフラッと倒れそうになる杏を支える


「杏?大丈夫?」

「ん。大丈夫、ごめん、結構寝てたやろ?頭にぼーっとする」


でもまだ眠い
目をゴシゴシかく杏の手を止める


「赤くなるぞ?目薬いる?」

「泉、目薬持ち歩いてんの?」

「ドライアイっつたろ」


その辺に置いてあった鞄から目薬を取り出して、杏に渡す。


「そやった、泉はドライアイやったな」


納得納得!そう笑って目薬をさしていた。なんとも居心地の悪いこの場所で。


「朔?何座り込んでんの?」


部屋の角で座ってポカーンとこちらを見ている朔に、杏は気づいたようだ


「ば!お前!起きるタイミング!」

「いや、ちょっと前から目は覚めてたんやけどさ?脳味噌が働かへんくって…志木の声するし、泉の声するし、え?って一人で混乱してたんや」


起きてたのか…
全然気づかなかった。

目瞑って、どういう状況か考えてたんやで?そう言う
< 226 / 410 >

この作品をシェア

pagetop