愛は惜しみなく与う③
朔に手を伸ばして、朔もその手をとり、立ち上がる
部屋では志木さんが、入り口に座り込んだまま
そんな志木さんをみて、杏は話し出した
「なんでここにいるん?」
「…江森紗羅の事で分かったことがあったので、連絡しましたが繋がらなくて。あなたを調べました」
「調べたって?どーせなんかにGPSとか付けてるやろ!」
「いいえ。それは杏様のプライバシーの事もありますので。監視させていただいているとだけ。言っておきましょう」
「きも!で、何しにきたん」
「幹部の水瀬と江森紗羅が接触して居ましたので…杏様の身に何かあったのかと思い、昨晩車を走らせてからここへ来ました」
…車でって、5.6時間かかるんじゃねーの?もっとか?少し疲れたような顔の志木さんは立ち上がった
「喧嘩もあんたから、ふっかけたんやろ。その辺意識あったし」
また一歩杏は志木さんに近づいて言った
「帰り、今すぐ。今回の件は、またあたしから連絡するから。あたしは東堂に帰る予定はない。あたしが次あそこへ帰るのは、経営計画発表会の時や」