愛は惜しみなく与う③
そして最後にデコピンをした
「心配しすぎ。取り乱さへんよ。近づいてん、ようやくサトルに」
強く言う杏の後ろ姿を、ただ見ることしかできなかった。
でもその後ろ姿は
俺にとってはとても小さな背中だった
「志木が、手を汚す必要は全くない。それはあたしもや。あたしもサトルのせいで、犯罪者にはなるつもりもない。
然るべき方法で、サトルを裁いてやろうと思ってる。
あんたは、あたしが暴走するのを止める役目や。あんたがそんな、血走った目してたら、あたしは冷静にならざるを得ないやろ?
ちょっと最近、おかしいで」
どうかした?
杏は優しく問いかけて志木さんの手を握った。
そんな杏を前に、志木さんは力なく笑うだけだった
「すみません、勝手に不安になってました。あなたの御友人に手を出して申し訳なかったです」
「ま、志木はあたしのためにしか動かへんし、あたしのこと心配してたのは分かるから、泉がいいなら、許すよ」
何もされてない?大丈夫?
そう尋ねる杏に、大丈夫だったと答えるだけ。
2人の間に流れる空気を感じることが、今は嫌だった