愛は惜しみなく与う③
「おーーそーーいーーー!」
どでかい杏の声がして我にかえる
早くも海斗さんが出してくれた、送迎のバンを見つけたのか、大きく手を振る杏
その片手には浮き輪が…
はやくねーか?
隣にいる朔と響をみると、何故か顔色が悪い。そして慧はケラケラ笑う
「どうかしました?」
「いや、浮き輪に空気入れるスピード勝負をしててさ?杏ちゃんの肺活量が化け物で。だめだ、思い出したら笑える」
杏は顔色ひとつ変わっていない。
パンパンに膨らんだ浮き輪を大事そうに抱えている
「ありえないよ…つかれたぁ」
響も朔も、中途半端に膨らむ浮き輪を持っている。
ほんとこいつら、なんでも勝負したがるよな
「すごくなーい?あたしめちゃ肺活量あるねん!」
ピースをこちらに向ける杏
俺もやったら、多分負けそうだな
酸欠気味の朔と響は置いておいて、迎えに来てくれた人にお礼を言う。
海斗さんのところで働いている人だ
「笹塚と申します。一旦宿までお送りします」
全員、お願いしますと丁寧に言う。
俺は烈火のこう言うところが大好きだ