愛は惜しみなく与う③
別に俺たちはヤンキーをやりたいわけでもない。グレたのは認めるけど、それで誰かに反抗してやりたいって気持ちは今はもうない
俺はみんなに、社会不適合者になって欲しくない。
だから礼儀にはうるさくしてきた
しっかりと並んで頭を下げると、笹塚さんは笑っていた
「宿に着いたら、とりあえず海斗さんが仕事手伝ってほしいって言っていましたよ?」
「やだよーー俺たち海に行くんだ!」
「そーだそーだ!」
嫌だと駄々をこねる朔と響に、こわーい声が聞こえる
「おい、おめーら俺の手伝いできねーのか?」
海斗さんの声?
よくみると車のBluetoothが繋がっていて、海斗さんと通話中になっていた
げ!!とあからさまに嫌がった朔は、きっと海に行かせてもらえないくらい、コキ使われるだろう
車は5分ほど走り、すぐに宿にたどり着く
本当にいい宿だ
目の前はビーチに、裏にはキャンプができるような、広い原っぱみたいなのが広がる
全員窓に顔をへばりつけてキラキラとした目でみる。
そうか、ここに来たことあるのは俺だけか