愛は惜しみなく与う③
「……杏をこれ以上傷つけたら、杏が止めても、俺がお前を殺るから」

泉はそう言って家を出た


なんの音も聞こえない




「紗羅ちゃん、話そう。あたし達は友達として、色々と話せてなかったと思う。だからさ、最後に話そうよ」


紗羅ちゃんの口から聞きたい

なんであぁなったか

そしてサトルの事を



「杏ちゃんはさ、誰かを好きになったことある?」



「…紗羅ちゃんが言う" 好き "は、無いと思う」



紗羅ちゃんは壁に方を見て、あたしに背を向けたまま。

あたしはその側に立つ


紗羅ちゃんの後姿はとても小さい



「あたしね、気づいたら孤児院に居たの。サトルとはそこで出会った。すごく優しかったんだよ」


それは、この前、水瀬に捕まったときに紗羅ちゃんから聞いた。


「今サトルが何処に居るか知ってる?」

「知らない。何年も会えてない。連絡先も変わったのか連絡が取れない。でも信じて欲しいのは、スコーピオンの事は何も知らないって事」


今にも泣いてしまいそうな声
紗羅ちゃんも、サトルに人生を壊された1人なんだと思う
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