愛は惜しみなく与う③
背を向けていた紗羅ちゃんは、ゆっくりとこちらを向いた。

紗羅ちゃんと目が合い、あたしは言おうとしていたことを見失う


いっぱい聞きたいことも話したいこともあったのに。


言葉が出てこない



「杏ちゃんと出会ったのは偶然だよ。出会いは仕組んでない。あの時は本当に、助けてくれてありがとう。でも……」


次に向けられた目を見て


もう無理なんだなと思った




「サトルが好きなの。スコーピオンは全く知らないし、関係ないけど… あたしはサトルが好きだから。杏ちゃんとはもう、一緒にいれない」



そんなに好きなんや
あんな男の事が



「サトルと接触するつもりなら、あたしは紗羅ちゃんを、敵として扱うけど、その覚悟はある?」


「…あたしは所詮、水瀬に踊らされてただけ。サトルとはもう会えないと思う。会ってくれないし、連絡先も知らないし、何処にいるかも知らない。でも

もし連絡が取れて、サトルに何か頼まれたら…



あたしはそれを実行する。好きな人のために」


だって好きだから。杏ちゃんには、わからない気持ちだね

そう言われた
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