愛は惜しみなく与う③
くるりと振り返った泉は、優しい笑顔だった


そうやな

あたしは好きが分からへんけど

みんなを大切に想う気持ちはわかる

その気持ちが強くしてくれるし、あたしはあたしでいれる


「杏はそのままでいいよ」


そう言ってくれた泉の言葉で、心が軽くなる。
今日も紗羅ちゃんに言われた。

人を好きになる気持ちが、あたしには分からへんと。


昔から言われてきた


誰かを好きになる事がわからへんあたしは、人の気持ちに寄り添ってあげれへんと


散々言われてきた

女友達と呼べる人も少なく、恋愛の相談をされても、さっぱりやった


案外コンプレックスやったんかな



「みんなの事好きやで。その気持ちは嘘じゃないし、あたしはこの、あったかい気持ちを知ってる」


「うん、大丈夫だ。ちゃんと伝わってる」


「恋愛せな、気持ちは分からへんって」


「そうだな。でも無理にするもんじゃないし、そのままでいいんだよ」


立ち止まった泉に、あたしは頭を撫でられている。子供みたい。でも泣きそう



「女の子の友達、欲しかったなぁ」

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