愛は惜しみなく与う③


「え?杏ちゃんどうかしたの?」


あたし達を見た海斗さんは、手を止めてこちらに駆け寄ってくれる

手首ちょっと捻挫しただけやのに、このぶっ倒れて重傷感がでてるのは、泉のせいやと思う


「海斗さん、氷」

「わかった」


あたしは店の休憩室のソファにそっとおろされる。
逆にこっちが恥ずかしい…


「何してなった?なんか殴ったか?」

「殴ってへんわ!」


勢いよくツッコんでしまった。なんで何か殴った前提やねん!笑うわ!
でも泉は、ん?っと真剣な顔

はぁ…


「女の子が転びそうになったから。ちょっと手伸ばして支えた時に。思ったより負荷かかっただけ」

何か殴った訳ではないからな!と付け足しておくと、また顔がムッとなる

なんでよ。はぁ…
少し不機嫌なままの泉が、あたしの右手を恐る恐る触りながら腫れを確認している


「おまたせ!大丈夫?熱中症?」


海斗さんは片手に氷とスポーツドリンクをもって休憩室に飛び込んできた

いや、気持ちはわかるで

この暑さの中、お姫様抱っこして運ばれてきたら、あたしでも熱中症とか、ぶっ倒れたんかな?って思う
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