mariage~酒と肴、それから恋~《7》
栄子さんは、テーブル席(4人がけ)を一人で使ってる男性客の側に行って声をかけた。

加地くんと呼ばれた男性客がすぐに頷くと、栄子さんはあたしに手招きする。
「なごみちゃん、こっち座って、相席だけど良いでしょ!」

入り口に背を向けて座ってて顔は見えないけど、名前で呼ばれてるってことは常連さんか。

見えた上半身は、洗いざらしの黒髪と、グレーのスウェットっぽい長袖、やや細身。

名前にも姿にも見覚えある…かも。
この店、ほぼ常連だもんね~。

相席は、気は遣うけど、ま、いっか。
今さら別のもの食べに行く気しないもん。

「よう、姉ちゃん、久しぶりだね」
カウンター席の常連のおじさんが声をかけてきた。

「こんばんわ~」
愛想よく手を振って、テーブルの方へ進む。

加地くんも来たところかな?
テーブルの上には、お冷やとおしぼりだけが置いてあり、スマホをいじっている。

「失礼します」
加地くんの斜め向かいの椅子を引きながら、ちらっと観察する(怖そうなお兄さんだったら嫌だから)。

同じくらいの年かな?

飾り気ない、クールな印象の塩顔男子だ。
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