mariage~酒と肴、それから恋~《7》
「…いや、どうも」
加地くんの驚いた目は、すぐ元通りの無表情に戻り、グラスをかかげてから、グイッと半分くらい飲んだ。

怒ってなさそうだけど、気悪くしたかな?
それとも何とも思ってない?
…ま、いっか。

いるよね、こういうよく分かんない人って。

こういう人、苦手…ってことはない。
仕事上、色んな人と会うから、無愛想くらいで今さらビビんない。
何年、社会人してると思ってるの。

料理がこなくて暇なのか、ぼんやりした加地くんの目が、ふっと何かを見て止まった。

視線をたどると、あたしの横の椅子に立て掛けて置いたあたしのトートバッグ。
に付けているバッグチャーム。

飛行機のモチーフが付いている。

そこそこちゃんとした飛行機で、たまに小学生男子とかにはウケがいい。

「飛行機、可愛いでしょ、これ」

飛行機が見えやすいようにバッグを持ち上げて声をかけたら、加地くんはフイッと首を振って否定した。

「…」あ、さいですか。

バッグを元に戻していると、加地くんがしゃべった。
「可愛くない。飛行機は、格好いいじゃね?」
無愛想なのか真剣なのか分からない、つまり真顔で。
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