この恋に名前をつけるなら、


そう思うようになったのは8年前。
マリアに出会った時だった。


俺の家は酒浸りでDVな親父と
優しい母との3人暮らしで

終わることのない父からの暴力に
心を削られ爆発しそうになっていた時だった。




「ハジメマシテー、マリアデスー!」




天使が話しているようだった。
長いブランドの髪に青い目。



歌うように話す彼女を
ずっと見ていたい。

そう思った。
一目惚れの類いだったと思う。






マリアは友達がいなかったから
家が隣だからと俺に懐いてしまい

ほとんど毎日を
一緒に過ごすようになっていった。



マリアは歌うことが好きだったから
童謡をつかって日本語を教えてあげた。



彼女の声はこの世で1番気が紛れた。

切り詰めた俺の心を癒してくれた。


幼少の頃は俺にとって
マリアの歌声が唯一の救いだった。

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