この恋に名前をつけるなら、



彼女のほうに目をやると



泣きそうになりながらも
笑顔で俺を見て


「ねぇシンちゃん。

今日の為に私いっぱい練習したんだ。
だからちゃんと横で聞いててね。

バンド誘ってくれてありがとう。
今人生で1番幸せかも」


そう言って俺を抱きしめた。



あぁ、こう言ってくれるだけで
もう十分じゃないか。



何を不安に思うことがある。



俺は今にも泣き出しそうな彼女の頭を撫でて

「せっかく綺麗にしたのに
ブサイクになるぞー」


「うるさいなー、もう泣かないよ。」


そう冗談を言って笑い飛ばした。
 



そうしないと俺こそ泣きそうだった。


本当に欲しい答えじゃなかったけど

優しくなるって
強くなるって決めたから。




なぁ、マリア。

俺は今日でお前を卒業するよ。




そう決心して家を出ると
外は雨が降っていた。 




俺の涙を隠してくれるかのように
俺の代わりに泣いてくれてるかのように。



「...一曲書けそうだよ。」



1人でそう呟くと


「何言ってんの?早くいくよー??」



車の助手席の窓を下ろし
カズが怒鳴りつけてきた。


「なんでもないよ。」



おれは笑いながら車に飛び乗った。







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