この恋に名前をつけるなら、
タカと店内を遠巻きに見ながら、
あの女と寝た寝てないとくだらない話をした。
「あ、マリアそこにいるじゃん。」
「え、どこ?」
「ほら、店の奥の。
バンギャル達に囲まれてる。」
「あ、ほんとだ。」
カズみたいな奴に連れて行かれてなくて
安心していたら
マリアが俺たちの視線に気づいて
こっちに駆け寄ってきた。
「ねぇ、シンちゃん!!
あそこで歌っていいかな?」
指差した先は店にある小さなステージ
「喚くなよ、急にどうした?」
「お姉さん達がマリアの曲聞きたいって」
「え?」
「ねぇ、いい??」
マリアの曲とか何?
お姉さんって誰だよ?
酒の入った回らない頭で
なんて答えようか考えていたら
「いいよ、歌っておいで。」
タカがマリアの頭を撫でながら答えた。
「やった、ありがとう!!」
マリアは嬉しそうに元の場所に帰っていった。
「え、いいの?」
気になってタカに尋ねると
「大丈夫だろ、なぁマスター。」
「もう、好き勝手して。
またいっぱい連れてきてよー。」
困ったように笑って許してくれた。
「俺そんなマスターが大好きだよ。」
「まぁ、シンちゃん。
あんた本当に口が上手いわね。
でも一言いわせてもらうなら
嘘ばっかり言ってたら身も心も疲れるわよ。
今にも倒れそうよアンタ。
正直に自分の感情ぶつけてみたら?」