この恋に名前をつけるなら、


____________



「固まっちゃって〜、
坊やカワイイじゃーんっ。」



俺は今どうしよもなく戸惑っている。


タカに会いに行ったはずなのに
気づけばバーに着いていて
両脇にセクシーなお姉さんに囲まれて
先程から鼻血がでそうだ。


中坊になったばかりの俺には
刺激が強すぎてカチコチに固まってたら



「あ、いたいた。
タカー、こっちきて。」


たぶん隣でいたシンが
タカを呼んだ。


そのシンが呼びかけるその先には

半裸で革ジャンを羽織り
両脇には女を侍らせタバコを吸うタカ


俺が昼間見た人とはまるで別人だった。


そんな怖い人が俺にどんどん近づいてきて
さっきまでの緊張とはまた違う緊張で
俺は全身の汗が止まらなかった。



「なにー?」


「コイツお前とヤりたいんだってー。」



笑いながら俺のことを紹介したシン


「いやっ、違っ、、あのっ、」
 

俺が慌てて否定しようとすると
目の前が暗くなって唇に生温かい感触がした



「ゴメンね、俺男と寝る趣味ないんだわ。

お前顔カワイイからこれはリップサービスねー。」


笑いながら俺の頭を撫でるタカ


そう、俺の神聖なファーストキスは
タカに奪わせたのだ。


色々ショックで声が出ないで
ボケッとしていたら

横で爆笑していたシンが口を開いて


「違う違う、コイツお前とバンドやりてぇの」


と言い直した。


「は?、お前それならそー言えよ。」


「いやぁ、イイモノ見させてもらったわ」


俺を置いてけぼりに楽しそうに話す2人を傍観していると


「お前、何ができんの?」


とタカが俺に聞いてきた。


「いや、何も、、。」


「じゃあ、シンがギターやるから
俺ベースでお前ドラムやれ。」


「え?、、いいの?」





「死ぬ気で練習して
しっかり俺についてこいよ?」




そう笑いながら話すタカに
やっぱり俺は心がギューッとなった。



俺もこんな風にカッコよくなりてぇ



そう思わせてくれた奴なんて
後にも先にも



タカ、お前だけだよ。



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