この恋に名前をつけるなら、
タカの話によれば
お袋さんが男と蒸発したらしい。
それで生きていくために
学校もバンドもやってる場合じゃない
働かないといけないんだと
俺に話してくれた。
タカは淡々と話すのに
聞いてる俺が泣いてしまいそうだった。
「おめぇがなんで泣いてんだよ。」
困ったように笑いながら俺をなだめてくれた。
「別に寂しかねぇよ。
人間ってのはいつだって1人だよ。」
そう言うタカだったけど
俺には寂しそうに見えた。
タカが大丈夫だと言うから
大丈夫だと俺は思い込むことにした。
この時俺が馬鹿だったから
タカの苦しみに気づいてやれなかった。
もうこの時からタカは壊れかけていたのに。