冷徹社長の初恋
「絲、お疲れさま。今日は来てよかった。すごく参考になった」

「ありがとうございます。子ども達が頑張ってくれましたから、大成功です」

そう返すと、春日さんは目を見開いた。何かおかしなことを言ったかと、不安になってしまう。

「絲は、今日の授業のために、たくさんの準備をしてきたんじゃないのか?それこそ残業ばかりして。人に見られるから、教室や廊下の掲示板も考えて整えたんだろ?そこまで用意してきた自分よりも、子ども達の頑張りが全てだというんだな」

決して非難するのではなく、どこか感心したような口ぶりだった。

「準備をするのはあたりまえのことで、主役はいつでも子ども達というのがあたりまえなので、たぶん、どの教師も同じ反応をすると思いますけど……」

「そうかもしれない。でも、絲の目には常に確かな愛情を感じる。嘘偽りのない、純粋のな。
これは、誰もが持ち合わせているものではない。経験が浅い者は、必死になりすぎてそんな余裕はなかなか持てない。経験を積んだ者は、慣れて、ともすれば惰性で動くようになる。絲のような目をする者は、本当にこの仕事が好きで、楽しんでやっている者だけだ」


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