きみこえ
部活ハント! 運動部編
「どうだ? 何か良い部活は見つかったのか?」
冬真が合流した時、二人はまだグラウンドに居た。
「それがさぁ・・・・・・」
陽太はこれまでの経緯を説明した。
「月島さん、運動部は何か興味ある? 足速いから陸上部とか本当は良さそうだけど」
ほのかは授業で醜態を晒してしまった事を思い出し、顔を赤らめながらフルフルと首を横に振った。
「うーん、そっかぁ、勿体ないけど好きな事をするのが一番だしね。あ、あれはどうかな」
そう言って陽太が指さしたのはグラウンド横にあるテニスコートだった。
見ればテニスウェアを着た女子部員が短いスカートをはためかせながら楽しそうにラリーをしているのが見えた。
【ちょっと、やってみたいかも】
「よし、じゃあ部員に話してみるよ」
陽太は学校では人気者で、部員に二言三言伝えるとあっさりとほのかのテニス体験が許可された。
「じゃあ軽くラリーしてみましょうか」
そう言ってテニス部員がボールを打った。
ほのかは持ち前の脚力ですぐにボールに追いついた。
「おお、やっぱり月島さん足速いなぁ」
陽太は感嘆の声を上げた。
ほのかはテニス漫画で読んだ事のあるバズーカショットを思い出しフォームを真似てみた。
肘を引き、ラケットに角度をつけ、片足を踏み込み、漫画の主人公の様に頭上に吹き出しが出ているのではないかと思う程心の中で「今だ! バズーカショット!!」とキメ顔で叫び、狙いを定めてラケットを振った。
しかし、勢い良く振ったラケットは思い切り空振り、ボールは虚しくほのかの後方をバウンドして静かに転がった。
「まあ、最初だから仕方ないよ、次行ってみよう!」
そして、テニス部員の計らいでスピードも落として十数回ボールを打ったが、ほのかは全ての打球に空振りした。
ほのかはあまりの空振り具合に涙目で陽太を見た。
「え、えーと、練習すれば上手くなるって。他にも向いてるのがあるかもだし、他も見に行こうか」
「ってことで今から体育館の方へ行く予定なんだ」
「そうなのか」
グラウンドから少し離れた所に体育館があり、第一体育館と第二体育館の二つがあった。
「ここが第一体育館だよ。第一体育館ではバスケ部とバレーボール部と、バトミントン部が練習で使ってて、第二体育館では柔道部と剣道部が使ってるんだけど、見るのは第一体育館で良いかな?」
ほのかは柔道や剣道をしている自分の勇ましい姿を想像してはみたが、そもそも人と一対一で勝負をするような事が苦手だと思った。
【第一体育館で大丈夫】
「じゃあ第一体育館行こっか」
体育館に着き、中を覗き見るとバレーボール部とバスケ部が皆青春の汗を流し、一生懸命に練習していた。
ほのかはキラキラした皆の姿を見て、この輪の中に入る事が出来たなら、仲間が増えて、友達も増えて、青春という熱くて、眩しい素敵な高校生活が送れるだろうか、と思った。
友情、努力、勝利の方程式で立ちはだかる数多くのライバル達を倒し、地区予選を順調に勝ち進み、県大会出場、目指すは全国・・・・・・の妄想をしたところでほのかは肩を叩かれ現実に引き戻された。
「おーい、月島さん?」
肩を叩いたのは陽太だった。
どうやら何度か声を掛けられていた様だが、ほのかは全く気が付いていなかった。
【ごめんなさい、全国優勝一歩手前まで行ってました】
「全国優勝!?」
陽太と冬真は声を揃えて言った。
「あはは、何それ? それより今日はバトミントン部休みみたいだけど、バスケ部とバレーボール部には話つけたから体験出来るって」
ほのかは少し考えてバスケ部から体験してみる事にした。
「月島さんパス!」
部員がほのかにパスを出すと、ほのかは声やボールの音が聞こえない分一瞬反応が遅れるものの、足の速さでカバーし、すぐにボールに追いついた。
しかし、ボールを取ろうとした時、ボールはほのかの手をすり抜け顔面に直撃し、勢い余って後ろに倒れた。
「あああああ、月島さんっ!!」
陽太は慌てて駆け寄りほのかを助け起こした。
「大丈夫? 月島さん!」
【バスケがしたいです・・・・・・】
ほのかは目を回しながらスケッチブックにそう書いた。
「気持ちは分かるけど、保健室行く?」
そんなやり取りをしている中、冬真の携帯が鳴った。
「ん? 誰だ? 知らない番号・・・・・・はい」
冬真は少し警戒しながらも取り敢えず電話に出ると、特徴的な声から電話の相手が誰なのか直ぐに分かった。
『あ、氷室君? 言い忘れていた事があってね。ほのかちゃんに部活紹介するのは良いけど、くれぐれも怪我だけはさせないでね? もし、怪我させたらどうなるか・・・・・・分かるよね?』
冬真はそこで怖くなり通話を切った。
「あの保健医、なんで俺の番号知ってるんだ!? どうなってるんだ? この学校の個人情報管理は」
そしてほのか達はどうしたかと二人を見やるとほのかはスケッチブックに【次はバレーボールやってみる】と書いて陽太に見せているところだった。
冬真の脳裏には今までのパターンからこれからの展開が読めていた。
柄にもなく冬真は慌てて二人に近づき陽太の肩を掴んだ。
「おい、やめておけ! このままだと、レシーブに失敗してまた顔面にボールをぶつけるか、トスに失敗して突き指する未来しか見えん!」
冬真はほのかには分からない様に陽太だけ後ろを向かせて二人でひっそりと話した。
「えー、でも本人やりたいって言ってるし」
「このままだとストーカー保健医に何されるか分からん! とにかく、ここは俺に任せろ」
そう言って冬真はほのかの説得を試みた。
「月島さんは運動とか好きなのか? 体育とか得意?」
ほのかはそう問われて中学時代の体育の授業を思い出し、成績はいつも散々だった事を今更ながら思い出した。
【運動・・・・・・苦手かも】
「ええー、月島さん足は速いのに!」
陽太は驚きの声をあげ、冬真は陽太に耳打ちした。
「恐らく足だけ速いがその他の動作が苦手なタイプなんだろう。いわゆる運動音痴だ」
しょんぼりしているほのかを見て冬真は声を掛けた。
「月島さん、この学校にはまだまだ部活がある。今度は俺が月島さんに合いそうな部活案内するよ」
そう言って冬真はほのかに手を差し伸べた。
自信ありげで、その吸い込まれそうな凛とした瞳に惹かれ、ほのかは冬真の手を取った。
「どうだ? 何か良い部活は見つかったのか?」
冬真が合流した時、二人はまだグラウンドに居た。
「それがさぁ・・・・・・」
陽太はこれまでの経緯を説明した。
「月島さん、運動部は何か興味ある? 足速いから陸上部とか本当は良さそうだけど」
ほのかは授業で醜態を晒してしまった事を思い出し、顔を赤らめながらフルフルと首を横に振った。
「うーん、そっかぁ、勿体ないけど好きな事をするのが一番だしね。あ、あれはどうかな」
そう言って陽太が指さしたのはグラウンド横にあるテニスコートだった。
見ればテニスウェアを着た女子部員が短いスカートをはためかせながら楽しそうにラリーをしているのが見えた。
【ちょっと、やってみたいかも】
「よし、じゃあ部員に話してみるよ」
陽太は学校では人気者で、部員に二言三言伝えるとあっさりとほのかのテニス体験が許可された。
「じゃあ軽くラリーしてみましょうか」
そう言ってテニス部員がボールを打った。
ほのかは持ち前の脚力ですぐにボールに追いついた。
「おお、やっぱり月島さん足速いなぁ」
陽太は感嘆の声を上げた。
ほのかはテニス漫画で読んだ事のあるバズーカショットを思い出しフォームを真似てみた。
肘を引き、ラケットに角度をつけ、片足を踏み込み、漫画の主人公の様に頭上に吹き出しが出ているのではないかと思う程心の中で「今だ! バズーカショット!!」とキメ顔で叫び、狙いを定めてラケットを振った。
しかし、勢い良く振ったラケットは思い切り空振り、ボールは虚しくほのかの後方をバウンドして静かに転がった。
「まあ、最初だから仕方ないよ、次行ってみよう!」
そして、テニス部員の計らいでスピードも落として十数回ボールを打ったが、ほのかは全ての打球に空振りした。
ほのかはあまりの空振り具合に涙目で陽太を見た。
「え、えーと、練習すれば上手くなるって。他にも向いてるのがあるかもだし、他も見に行こうか」
「ってことで今から体育館の方へ行く予定なんだ」
「そうなのか」
グラウンドから少し離れた所に体育館があり、第一体育館と第二体育館の二つがあった。
「ここが第一体育館だよ。第一体育館ではバスケ部とバレーボール部と、バトミントン部が練習で使ってて、第二体育館では柔道部と剣道部が使ってるんだけど、見るのは第一体育館で良いかな?」
ほのかは柔道や剣道をしている自分の勇ましい姿を想像してはみたが、そもそも人と一対一で勝負をするような事が苦手だと思った。
【第一体育館で大丈夫】
「じゃあ第一体育館行こっか」
体育館に着き、中を覗き見るとバレーボール部とバスケ部が皆青春の汗を流し、一生懸命に練習していた。
ほのかはキラキラした皆の姿を見て、この輪の中に入る事が出来たなら、仲間が増えて、友達も増えて、青春という熱くて、眩しい素敵な高校生活が送れるだろうか、と思った。
友情、努力、勝利の方程式で立ちはだかる数多くのライバル達を倒し、地区予選を順調に勝ち進み、県大会出場、目指すは全国・・・・・・の妄想をしたところでほのかは肩を叩かれ現実に引き戻された。
「おーい、月島さん?」
肩を叩いたのは陽太だった。
どうやら何度か声を掛けられていた様だが、ほのかは全く気が付いていなかった。
【ごめんなさい、全国優勝一歩手前まで行ってました】
「全国優勝!?」
陽太と冬真は声を揃えて言った。
「あはは、何それ? それより今日はバトミントン部休みみたいだけど、バスケ部とバレーボール部には話つけたから体験出来るって」
ほのかは少し考えてバスケ部から体験してみる事にした。
「月島さんパス!」
部員がほのかにパスを出すと、ほのかは声やボールの音が聞こえない分一瞬反応が遅れるものの、足の速さでカバーし、すぐにボールに追いついた。
しかし、ボールを取ろうとした時、ボールはほのかの手をすり抜け顔面に直撃し、勢い余って後ろに倒れた。
「あああああ、月島さんっ!!」
陽太は慌てて駆け寄りほのかを助け起こした。
「大丈夫? 月島さん!」
【バスケがしたいです・・・・・・】
ほのかは目を回しながらスケッチブックにそう書いた。
「気持ちは分かるけど、保健室行く?」
そんなやり取りをしている中、冬真の携帯が鳴った。
「ん? 誰だ? 知らない番号・・・・・・はい」
冬真は少し警戒しながらも取り敢えず電話に出ると、特徴的な声から電話の相手が誰なのか直ぐに分かった。
『あ、氷室君? 言い忘れていた事があってね。ほのかちゃんに部活紹介するのは良いけど、くれぐれも怪我だけはさせないでね? もし、怪我させたらどうなるか・・・・・・分かるよね?』
冬真はそこで怖くなり通話を切った。
「あの保健医、なんで俺の番号知ってるんだ!? どうなってるんだ? この学校の個人情報管理は」
そしてほのか達はどうしたかと二人を見やるとほのかはスケッチブックに【次はバレーボールやってみる】と書いて陽太に見せているところだった。
冬真の脳裏には今までのパターンからこれからの展開が読めていた。
柄にもなく冬真は慌てて二人に近づき陽太の肩を掴んだ。
「おい、やめておけ! このままだと、レシーブに失敗してまた顔面にボールをぶつけるか、トスに失敗して突き指する未来しか見えん!」
冬真はほのかには分からない様に陽太だけ後ろを向かせて二人でひっそりと話した。
「えー、でも本人やりたいって言ってるし」
「このままだとストーカー保健医に何されるか分からん! とにかく、ここは俺に任せろ」
そう言って冬真はほのかの説得を試みた。
「月島さんは運動とか好きなのか? 体育とか得意?」
ほのかはそう問われて中学時代の体育の授業を思い出し、成績はいつも散々だった事を今更ながら思い出した。
【運動・・・・・・苦手かも】
「ええー、月島さん足は速いのに!」
陽太は驚きの声をあげ、冬真は陽太に耳打ちした。
「恐らく足だけ速いがその他の動作が苦手なタイプなんだろう。いわゆる運動音痴だ」
しょんぼりしているほのかを見て冬真は声を掛けた。
「月島さん、この学校にはまだまだ部活がある。今度は俺が月島さんに合いそうな部活案内するよ」
そう言って冬真はほのかに手を差し伸べた。
自信ありげで、その吸い込まれそうな凛とした瞳に惹かれ、ほのかは冬真の手を取った。