三日間の幸福
「え?」
「彼氏じゃない。」
「でも・・・」

平良の言葉を遮った。

「妻子持ち。家庭がある人。」

私の発言に、部屋がシンとなる。
重い空気。

ゆっくりと息を吐く。

そう、隆之には奥さんと子どもがいる。

「そっかぁ。」

平良がやっとの思いで沈黙を破った。

「それはなんか、残念だな。」

そう言って私に笑いかける。
悲しい笑顔だ。

「好きなの?その人が。」

私は首を横に振る。

「好きだとかそういうんじゃない。」
「じゃあなんで・・・」

なんで私は隆之とダラダラ関係を続けてるんだろう。

良くないことと知りながら、好きでもないのに、もう3年も。

「家庭がある人なら、逆にいいかなと思った。」

私はただ一人でいるのが寂しかっただけだ。

でも誰のことも好きになれずにいた。

そんな私に妻子持ちは丁度良かった。

そんなこと言ったら、きっと最悪な人間だと思われる。

平良が私の目をじっと見つめてくる。
何を言いたいんだろう。

「まあ、分からなくもないけど、やってることは良くないな。」

平良はサッと立ち上がる。

「ごめん、俺、他に泊まるとこ探すけど。」
「え?」
「なんか、すっかりここに泊めてもらう気でいたけど、迷惑かなと思って。」

私も平良はここに泊まっていってくれるんだと思っていた。

「迷惑じゃないよ。」

たぶんすごく軽い女だと思われる。
誰でも部屋に泊めてる女。

でも私は平良にいてほしい。

平良は静かに頷いた。

「じゃあ、とりあえず風呂行くか。」

話をサッと変えてくれた。
平良の優しさだ。

その日、私たちはホテルの温泉に行って、当たり障りのない話をした。

まだ電気が通らない町。

平良がキャンプ用に持ってたランプだけで夜を過ごした。

静かな夜だった。
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