三日間の幸福
「沙和。」

またそう言ってほしい。

「沙和。」

また笑ってほしい。

「沙和。」

また会いたい。

「行くぞ。」

聞き覚えのある声。
視線を上げる。

「ほら。」

目が合った。

「行くぞ。」

そう言ってその人は私に手を差し出していた。

「なんで?」
「なんでって、おばさんに聞いたから。」

10年前と変わらない口調で言う。
本当に変わらない。

なんで?
なんでここにいるの?

なんでコイツはいつも私を助けようとするんだろう。

なんでこんな一人ぼっちの夜に、現れるんだろう。

私と平良は、避難所の体育館で再開した。
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