三日間の幸福
再会
「さっきまで五反田と飲んでたんだよ、そこらへんで。でも地震で店から出されちゃってさ。五反田は慌てて家に帰っちゃうし。」

ビジネスホテルの一室。

平良が淡々とした口調で言う。

平良が予約してた部屋だからシングル。
ホテルのスタッフが、もう一組布団を用意してくれた。

平良は私にベッドを譲ってくれて、自分は床に敷いた布団に転がっている。

狭い空間に2人。

「明日から荒木と後藤と男3人でキャンプしようぜって言ってたんだけど、さっき見たらそのキャンプ場、震源地近くでさ。絶対明日営業してなさそうだよなって話してた。」

ホロ酔い状態でペラペラ喋る平良。

「平良、眠いんだけど。」
「あ、ごめん。」

なんで平良はこんな非常事態でも平気なんだろう。
本当変わらない。

本当に30代か?

「キャンプがなくなったら、明日飛行機で大阪戻るかーって思ってたけど、ボランティアやるか。」
「眠いってば。」

私はそう言いながらつい笑ってしまう。

懐かしいこの感じ。

2人で住んでた頃を思い出す。
なんだかんだ毎日平良とくだらないことを喋ってた。

あれ、何年前だろう。

「なんだよ、沙和、久々の再開なのに冷てえよ。」

平良も笑う。

この大地震の最中で、安心できる存在に会えた。

不思議なほどにホッとする。

「眠いんだもん。寝せてよ。もう朝になっちゃうじゃん。」

そう言いながら目を瞑る。

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