金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「 …見えた。今、見えた…はぁ…はぁ。」

広斗は眉間に皺を寄せて、更に瑠璃をぐっと見据えた。

私は肩で息をする広斗から、瑠璃へと視線を戻す。

「あっ…瑠璃、ダメっ!行っちゃダメ。」

瑠璃の目が優しく…そして、悲しそうに私に訴える。



さよなら……菜乃。



「広斗っ!私、瑠璃といてあげなくちゃ。」

「何、言ってんだよ。ダメだ、菜乃っ
そいつといちゃいけない……。」

「嫌っ!私、瑠璃を泡になんかさせないっ!絶対に…させないっ。」

「菜乃っ。 よく見ろっ…。」

「 ………。」

「彼を、ちゃんと見ろっ……。」

「ちゃんと…見てるよっ!よく見てるっ。」

「菜乃、彼はもう20年も前に亡くなってる。
そして……たぶん左半身に大怪我をしてるのかな…
もしかして…火傷か…?」

「広斗、本当に見えるの?」

「この商店街も…彼も、俺には相当…朽ちて見えてるよ。」

広斗は何かに阻まれて、それ以上前へ動けないらしく…私に右手をぐっと差し出した。

「菜乃っ!早くっ……俺に捕まれっ!!
早く、こっちに来るんだっ!!」

力強い腕、生命力に満ちた手のひら。

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