【完】いいから逃げちゃおうよ
圭太に連れられてきたのは、私の知らない町。
迷うことなくスタスタ歩いていく圭太の歩幅は、
その割には小さくて。
…そんなことされたら、好きって気持ちがまた溢れて止まらなくなりそうで、怖かった。
「圭太、帰れなくなっちゃう」
「大丈夫、明日の朝には返す」
私は道のことを言ったつもりだったのだけど、
圭太は私が終電を気にしてると勘違いしたらしい。
ここまで電車で三時間と少し。
今すぐ帰らないと、家までたどり着けないような瀬戸際の時間。
ここに来るまでに圭太の手を振り払わなかったのは私だ。
お母さんに怒られる覚悟くらいしてる。
…まあ、圭太も終電で帰すつもりはないらしいけど。