【完】いいから逃げちゃおうよ
「可愛いくせに、鈍感で、
しっかり者に見えて、おっちょこちょいで、
弱いくせに、いつも強がって…。
……全部、俺だけのものになればいいのに」
心臓が、いたい。
心臓って、こんなに小さく縮こまることができるんだって、少し感心している私は、
やっぱりいつだってのんきだ。
昨日まで、ずっと夢に見てた。
圭太ともしも同じ気持ちなら、って。
圭太と付き合えたらどんなに幸せだろうって。
もう叶わないのに、今更答え合わせなんて、…辛いよ。
「なんで、俺以外に気づかれちゃったの?」
こんな場面でも、おちゃらけて、笑っているように見える圭太の瞳には、悲しみの色と涙が浮かんでいて。
今泣くべきなのは、私じゃないって思ってるのに、
涙は止まってくれなくて。