【完】いいから逃げちゃおうよ
「泣くなよ」
そういって、困ったように笑った圭太を、涙の奥に見た。
私たちの距離は、海と空にはなれなかった。
そういう、運命だった。
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急な話だったから、当然泊まるホテルなんて取ってあるはずもなくて、
でも、野宿なんてもってのほか。
仕方なくはいったのは、ラブホテル、というやつで。
受付が無人式のやつで、よかったなんて笑い合って、
なんだか悪いことをしているみたい、なんて、駆け出した時点でそうだったのに。
セミダブルのベッドに向かい合って寝転んだ。
「好きだよ」
圭太の囁きに
「私も好き」
そう返してしまったのは、この夜の妖しさのせいにしてしまおう。
自然と2人の距離がゼロになって、唇と唇が触れ合った。
ファーストキスは、甘くて怪しい罪悪感の味がした。