【完】いいから逃げちゃおうよ
「へぇ。どんな人?」
「とてもかっこよくて、優しい人。由紀の3つ歳上」
「私話したことある?」
「あるでしょ、この前の会社のパーティーで、どうしても由紀のこと好きになっちゃったっていうのよ」
「ふぅん」
「社長の息子さんが」
「………社長の息子?」
聞き捨てならない、と食いついた母のセリフ。
がめつい、って人が聞いたら思うかもしれないけど。
母の会社はとても大きくて、海外進出までしている。
その息子ってなれば、当然お金持ちだし、将来安泰出世ルートに違いない。
「それは…、結婚するしかないね」
お母さんにこれ以上無理させたくない。
兄弟には少しでも楽な生活をしてほしい。
それが、いつまでもわたしの1番の願いであることは間違いない。