妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~


「その指輪素敵ですよねぇ。お相手はどんな男性なんですか? もしかして羽柴コーポレーションのイケメンエリートですか」


いつか兄との合コンを熱望していた後輩女子が、私の手を掴んでうっとり指輪を見つめている。


「羽柴コーポレーションの人じゃないよ」

「えー。じゃあどこに勤めてる人ですか?」


みんなから食い入るように見つめられ、歯切れ悪く言葉にした。


「……アオト」


たった三文字で女子社員達から悲鳴にも似た声が上がる。


「アオトってあのアオト株式会社? 羨ましすぎる!」

「羽柴さんすごい! いったいどうやって知り合ったの?」

「やっぱりお兄様からの紹介ですか!?」


一斉に喋りかけられ戸惑うも、最後の質問だけはしっかり聞き取れたため苦笑いで答えた。


「紹介ではないけれど、彼は兄の友人で」


「私の幼馴染みたいな人」と言い終える前に、「きゃー」と先ほどよりも盛大に黄色い声が上がる。


「羽柴さん、寿退社するかもって上が言ってたけど本当?」

「……はい。たぶんそうなると思います」


結婚後の自分については現在考え中でもあるため、自然と視線が落ちていく。

すると早速、後輩が横から抱きついてきた。

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