妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「それ本当ですか!? お兄様でも旦那様でも、同僚の独身イケメンの紹介をどうかよろしくお願いします! 私が無事に彼氏をゲットするまでは、お願いですから寿退社しないで下さいね!」
後輩女子に刺激されたのか「私も紹介して欲しい!」と要望の声がいくつか続いた。
ふたりともそういうのを煩わしく感じるタイプだ。
それが分かっているから、私は彼女たちの期待通りの答えは返せず、曖昧に笑って誤魔化すに留めた。
ちょうど昨日、一緒に食事をしていた時、この先どうするか好きに決めて良いと恭介君が言ってくれた。
このまましばらくムラヅマ商会で働きたいと思っているならそうしても良いし、辞めて家でのんびりしたって構わないと。
それだけでなく、アザレア音楽スクールで晶子先生の手伝いをするという選択肢まで恭介君は与えてくれた。
実は、結婚相手の名前を上司に告げてから、社長までもがまるで私の顔色を伺うように話しかけてくるようになってしまい、もう私はここにいるべきではないと感じ始めていたところだったのだ。
とは言え、家でひとりぽつんといるのは、両親が亡くなった時の感情が湧き上がってくるため、どうしても嫌だった。