妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

だから彼からの最後の提案は私にとってとても魅力的で心が震えた。

イベントが終わってからというもの、ふとした瞬間に物足りなさを感じている自分がいたのだ。

私がピアノを弾くのを真剣に見つめていた子供達の表情。

音を自分で奏でた時の弾けるような笑顔。

「先生、ありがとう!」という温かな言葉。

全てがきらきらと純粋で、色とりどりの宝石を見つけたような気持ちになった。

どんな形でもいい。あの場所で働けたら、どんなに充実し幸せだろうか。

思いはどんどん募り、事務員として働かせてもらえないか話をしてみようかと、今日はそればかり考えている。

周囲が賑やかな中、またぼんやりと思いを馳せた私のデスクの上で、スマホが振動した。

誰ですかと騒ぎ立てる後輩を手で軽く押し返し、確認する。

『今度の日曜、空いているか? 行きたい場所があるから、出来れば予定を空けておいて欲しい』

恭介君からのメッセージに微笑み、すぐに『了解!』と返事をした。



日曜日。朝九時半。

待ち合わせの時間通りに家を出ると、もう既にマンションの前に恭介君の車が停まっていた。


「おはよう。今日はどこに連れて行ってくれるの?」


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