妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「……恭介君ありがとう。忘れないでいてくれて」
「当然のことだ」となんてことない様子で返事をするから、余計感激し涙が溢れそうになった。
昔話に花を咲かせているうちに、あっという間に両親が眠っている墓地に到着する。
最寄りの花屋で仏花などを購入し、私が先導する形で墓前に到着する。
「お兄ちゃん、最近来たみたいだね」
比較的新しい花がそなえられている。
けれど、最近私は来ていなかったので、手向けた人物は兄だろうと予想する。
社会人になる前まではよくふたりで御墓参りに来ていた。
無言で、墓前に並んで佇んでいたあの時の記憶が蘇り、切なさや寂しさまでも色濃く思い出す。
「お兄ちゃん、声をかけてくれたら良かったのに」
「大和が前に、悩んだ時とか辛い時によく立ち寄るって言ってた。あいつはいつもしれっとした顔をしてるから平気そうに見えるけど、意外と繊細だからな」
ぽつりと零した私のぼやきに恭介君が反応した。
彼の優しい言葉で、きっと兄は心静かにひとりで父と話したいことがあったのだろうと、私も納得する。
墓前を整え、線香の煙が漂う中、私たちは並んで手を合わせた。
お父さん。お母さん。と、心の中で話しかけた時、恭介君が同じように話かける声が聞こえ、目を開ける。
「お義父さん、お義母さん。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」