妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
彼の真剣な横顔をじっと見つめていると、すっと周囲の音が遠のいて行くような感覚に襲われる。
彼の眼差しの先で、両親が微笑んでいるような気がした。
「俺たち結婚します。おふたりの分まで必ず俺が美羽を幸せにします」
覚悟に満ちた声が凛と響いた。嬉しくて笑みを堪えきれないまま私も墓前へと顔を向け、恭介君の腕に自分の腕を絡めた。
「私も、恭介君を支えるから!」
何の力もないし、相手は完璧な人だから私の力など必要ないかもしれない。
けれど、貰うばかりでなく与えられる妻でありたい。その気持ちだけは、これからも無くさず持ち続けていたい。
私も彼を幸せにしたいから。
両親に宣言した私の腰を恭介君がくいと引き寄せ、「ありがとう」と囁きかけながらこめかみにキスをした。
柔らかな不意打ちに目を丸くした私に微笑みかけてから、恭介君はお墓へと視線を戻し、気まずい顔をする。
「あまりにも美羽が可愛かったら、つい。ほんの出来心というか……、すみません」
いきなり謝り出したことに対して、疑問符を頭に浮かべた。すると、恭介君が私をちらりと見て、自分の口元を手で覆い隠す。
「今ので、お義父さんを不機嫌にさせてしまったかもしれない」
本気で困っている恭介君の姿がおかしくて、私はお腹を抱えて笑う。
「恭介君、なんの心配をしているの?」