妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

叔父の後に晶子さんから電話がかかってきて、その時、夕食をと誘ってもらった。

飛び跳ねるくらい嬉しかったけど、一度首を縦に振ってしまった以上、叔父との約束を断ることも出来ず、涙を飲むしかなかったのだ。

気まずい気持ちとしんみりした空気を変えるべく、笑顔で問いかけた。


「そうだ。私に話したいことってなんですか?」

「あぁ、そうだったわ。ひとまずこの部屋で待っていてちょうだい。お茶くらい飲んでいってもらいたいし。あ、お菓子も出すわね。それから電話で話したマドレーヌも包んで持ってくるから」


言うなり、晶子先生は廊下を奥へ進んでいく。私は「ありがとうございます」と返事をして、レッスン室へとそっと足を踏み入れた。

椅子に座って待とうかと頭で考えながらも、足は真っ直ぐピアノへと向かう。


「晶子先生も、叔父さんも、いったい私に何の話があるのかな」


晶子先生は電話口でまず「生徒たちにマドレーヌを作ったのだけれど大量に作りすぎてしまったの」と話し始め、「どうしようかと思った時に私の顔が思い浮かんで久しぶりに声が聴きたくなって電話してみたのよ」と続けた。

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