妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「ふたりで一緒に幸せになろう」
彼の真剣な眼差しと真摯な声で、私の心にあった不安が影を潜めた。
大好き。
恭介君への愛しさで胸が熱くなる中、こんな私でも彼に与えられるものが一つあったことを思い出す。
結婚してよかったと思ってもらえるように、胸いっぱいのこの愛情をあなたに捧げよう。
できるだけ早く結婚式を挙げたい。
彼の両親への挨拶時に発した恭介君のひと言が始まりの合図だった。
私の意見を取り入れながら晶子先生が嬉々としてぐいぐい話を進めてくれたため、式場や日取り、ウェディングドレスなど、結婚式に関する物事があっという間に決まっていった。
新郎新婦がアオト株式会社社長の息子と羽柴コーポレーション社長の姪だと知ると、担当がことごとく責任者へと変わる。
私は自分たちの親が成し得てきたことの偉大さを改めて実感し、そして素敵な式になりそうな予感に、期待で胸を膨らませていった。
駆け抜けるように八ヶ月が過ぎ、――……雲ひとつない空の下、ついに結婚式当日を迎える。
ベイエリアにある高級とランク付けされているホテルの控え室。
オフショルダーの純白のウェディングドレスに身を包み、晶子先生に話しかけられても緊張でうまく笑い返せないまま、「失礼します」と響いた低い声に私は振り返る。