妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

そっと彼の手が私の肩に触れる。素肌で感じる彼の手の大きさと熱に、気恥ずかしくて瞳を揺らすと、そっと耳元に恭介君が顔を寄せてきた。


「綺麗だよ」


頬を掠めた吐息と甘い響きに鼓動が一層高鳴り、ついねだるように彼の唇を見つめてしまった。

ほんの数秒前まで落ち込みかけていたというのに、綺麗と褒められただけで気持ちは簡単に上昇し、おまけに欲まで出てくる。

今日が特別な日だと思ってくれているなら別の言葉も、……私を「好き」だと言ってくれたら良いのに。

願いを込めて彼を見つめても、その形の良い唇は私が求める二文字を紡ぐことはない。

そして私自身もまた、あなたが「好き」だと伝えるタイミングを掴めず、口を閉ざす。

瞬間抱いた心の中の靄は、三時間後、恭介君の隣に立ち、牧師と向かい合った時にはもう、跡形もなく消え去っていた。


「病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、愛し敬い慈しむことを誓いますか?」


キラキラと光がこぼれ落ちるステンドグラスを背後に立つ牧師からの問いかけにまずは恭介君が、続いて私が返事をする。

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