妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
一週間ほど前に家具の搬入も済み、いつでも暮らし始められる状況ではあったのだが、二人で話し合い、この家での生活のスタートを今日にしたのだ。
もちろん新居に帰宅するのは今日が初めてであり、自分の隣に恭介君がいるのもなんだかくすぐったい。
真新しい匂いに満ちた廊下を進む彼の後を追いかける。
恭介君が落ち着かないようにリビングを見回しているため、お互い家に馴染むまでまだ少し時間がかかるなとひとり笑みを浮かべる。
リビングのテーブルの手前で恭介君がため息をついた。
「美羽。本当に良かったのか? 俺の母さん、こんな調子じゃ毎日のように訪ねてくるぞ」
大股で隣に並び、彼の視線の先にあった物へと手を伸ばす。
旅行のパンフレットや雑誌などがたくさん並べられていて、晶子先生が「新婚旅行にどうかしら?」と微笑む顔が頭に浮かんだ。
新婚旅行は恭介君が無理なくまとめて休みをとれる時にと考えているため、少し先の話になりそうなのである。
まだ具体的には決められない状況ではあっても、どこにしようかなとパンフレットを眺めるだけで心が弾むのは間違いない。