妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
そして置き手紙にも目を通す。
私たちへの気遣いの言葉から始まり、お夜食にとおにぎりを作ってくれていたり、すぐに疲れを癒せるようにとお風呂の準備までしてくれているのを知り、自然と笑みがこぼれ落ちた。
「度がすぎるようなら遠慮なく言ってくれ。俺から話すから」
「平気だよ。私は大歓迎だし」
恭介君の呆れ口調でのひと言に、私は大きく首を横に振る。
晶子先生だって朝早くから私に付き添ってくれたし、疲れているはずだ。
そんな中、私たちのためを思って動いてくれたのだから、無下にしちゃいけない。
「それに、晶子先生をお母さんと呼べることが、私嬉しいの。大好きで、尊敬もしていて、その上、信頼できる。だから気軽に来て欲しい」
「そっか……。美羽が嬉しいなら俺も嬉しい。ただ、俺が邪魔だと感じた時は遠慮なく言わせてもらうから、そのつもりで」
冷淡な言いように思わず噴き出し、「分かりました」と返事をする。
パンフレットをまとめてから、何気なく彼へと視線を向けた瞬間、微笑ましかった気分が吹き飛んでいった。
恭介君がジャケットを脱いだ。
ワイシャツを通して見てとれる、引き締まった体つき。男らしさを間近で目にし、急に焦りが込み上げてくる。