妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
彼と夫婦になり、初めての夜。
邪魔するものなど誰もいない。朝まで二人っきり。
ゆるりと恭介君が振り返り、目があった。高鳴る鼓動を悟られたくないのに、顔が強張り、体が硬直する。
「どうした?」
彼が私に向かって一歩踏み込んだ瞬間、硬直していたはずの右足が勝手に、しかも俊敏に後ろへと下がった。
「なぜ緊張してる?」
呆気にとられ動きを止めた恭介君から飛び出したひと言に、泣きたくなる。
「今夜が私にとって初めての経験になるかもと今更ながら焦ってます」なんて言えるはずもない。ただ顔を熱くさせていると、恭介君がふっと笑みを浮かべた。
ゆったりとした足取りで彼がこちらに近づいてくる。さっきと違い後ずさりせずに済んだのは、今度こそ体が硬直して動かなかったから。
そっと彼が身を傾け、私の耳元で囁く。
「先に風呂に入る。疲れているだろうけど、眠らないように」
恭介君と見つめ合い、数秒呼吸を忘れる。ちょっぴり意地悪に笑うその様子から、彼は私が何に緊張しているのかを気づいたようだった。
「神様に誓うだけじゃ足りない。もっと愛を伝えたいんだ。一晩中かけてでも」