妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
艶やかな声に頬を撫でられ、体が甘く震えた。
恥ずかしさと緊張が入り混じりなかなか言葉が出てこないでいる私から、恭介君は視線をそらしてふふっと笑う。
そこで自分はからかわれたのだとやっと気が付き、「恭介君!」と声を大にした。
すると、彼が私の頭の上に手を乗せ、こちらを見ぬまま再び苦笑する。
「すまない、俺も舞い上がってる。けどやっぱり、美羽が可愛すぎるのが一番悪い」
バスルームへ向かう恭介君の背中を見つめながら、「私のせいにしないでよ」と甘すぎる言葉を浴びすぎて火照った頬を両手で覆った。
この家には少し前から晶子先生と共に頻繁に訪れているためそれなりに馴染んでいるはずなのに、恭介くんと暮らし始めた今は、緊張からかこれまでとまた違った景色に見える。
そわそわと落ち着かないまま意味もなく室内を行ったり来たりし、ソファーに座ってテレビや旅行のパンフレットへと目を通したりした。
その後、恭介君と入れ替わりでお風呂に入った。
入浴後、さっぱりとした様子で出てきた彼とは違い、私はぎこちなさから解放されることなく彼が待つリビングへと戻ることとなる。
ペタペタと私のスリッパの音が響いたからか、ソファーに腰掛けてパンフレットを見ていた恭介君がゆったりとした動きでこちらに顔を向けた。