妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

ショッピングモール内の教室を受け持っている四十代半ばの男性室長から折り目正しく頭を下げられ、私もすぐさま「お疲れ様でした」と同じように頭を下げた。

つい先ほども、これから半年の間に新規開設予定となっているふたつの教室のそれぞれの室長を見送ったばかりだ。

みんな、私を通して恭介君の姿を見ている。

それがわかるからこそ、挨拶ひとつにしても失礼のないようにと緊張しっぱなしだった。

もちろん私はミーティングに参加していない。

ミーティングに合わせてレッスンはお休みとなったため各教室の掃除をしたり、余った時間は事務や雑務等のマニュアルを確認したりと学びの時間にあてていた。

通路奥にあるミーティングに使用していた大教室の方をちらりと見て、ついため息が口をついて出る。

最後に、その大教室の片付けを手伝ってから帰宅しようと思っているのだけれど、晶子先生ともうひとりが、なかなか出てこない。

そしてその女性こそ、恐らく一番油断しちゃいけない相手だと女の勘が告げている。

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