妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
だから、恭介君の妻の座を私に奪われた気がして面白くないのだろう。
頭のてっぺんからつま先までじろじろ見られた。
値踏みされているようで正直不愉快だけれど、反抗的な態度で返すと事を大きくしてしまいそうで、顔を俯かせ必死に堪えた。
「恭介さんに、お付き合いしている女性がいたのならそう言ってくださればよかったのに。わたくし共、真剣でしたのよ? 気持ちを踏みにじられた気分だわ」
しかし、晶子先生を非難する声音に不満が抑えきれなくなり、一気に発言する。
「私たち、長い交際期間を経て結婚に至った訳ではないので、きっと晶子先生にとっても急な話だったと思います。だから……」
そこで私は言葉を途切らせ、表情を強張らせた。
余計なことを言ってしまったかと不安になる程、女性の眉間のしわが深くなっている。
「急な話って。うちの娘はもう何年も前から恭介さんを慕っていたのよ。可哀想に、あの子は結婚の知らせを聞いてから食事も喉を通らなくて、このまま寝込んでしまうのではと不安になるくらい塞ぎ込んでいるわ。その真剣さがあなたにはあって?」
私だって本気だ。そう言いかけるも、女性の大きなため息に遮られてしまった。