妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~


「見合いの約束もしていたのに」


吐き捨てられたひと言に、思わず晶子先生へと目を向ける。しかし、晶子先生は渋い顔で首を小さく横に振った。

見合い写真に対し、恭介君は「興味がない」とばっさり切り捨てていた。確かにあんな様子では、約束を取り付けられたはずがない。

自分の都合のいい風に解釈しているのか、それとも、私を不安にさせたいがために嘘を付いているのか。

心の内を探るように女性を見つめ返した時、ふんっと馬鹿にしたように鼻で笑われた。


「それに働き出したと言っても、正社員の扱いじゃないんですって? 単なる時間つぶしとして考えているのかしら。それともそこまで必要とされていないのかしら。どちらにしても、お気軽な身分で羨ましいわ」


ちくりと痛いところも突かれたため、余計に傷つき、腹も立つ。

怒りで拳を握りしめると同時に、背後でドアが閉まった音が響いた。

女性が「まぁ」と表情を明るくすると同時に私も振り返り、恭介君の姿を見つける。不満を隠しきれないままに微笑みかけた。

颯爽とした足取りで私の横に並んだ彼が「お疲れ様でした」と声をかけると、女性は先ほどとは打って変わってにこやかに頭を下げた。


「てっきり今日はお見えにならないかと」

「間に合うならミーティングにも顔を出したいと思っていたのですが、いろいろと立て込んでいまして」

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