妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

私との結婚を失敗だったと決めつけているような言い方をされ、カチンとくる。

どうしても許せなくて言い返そうとすると、恭介君に腕を引かれた。

彼の冷静な面持ちをじっと見つめ返し、私は開きかけていた唇を引き結ぶ。

力を抜いた私の肩へと、彼が寄り添うように手を載せた。


「交際期間は短い方だと思います。でも、片思いしていた年月はとても長いので、俺の心の中には彼女との思い出が沢山あります。ひとつひとつが温かくて、大切で、愛おしくてたまらない」


不意に恭介君と視線が絡み合う。私にくれたとびきりの優しい微笑みにとくりと鼓動が跳ね、胸が熱くなる。

プロポーズは突然だったかもしれないけれど、私たちの今はこれまで共に過ごした時間や絆を元に成り立っている。

私たちの関係を知らずに、勝手なことを言われたくない。

おもむろに恭介君は女性へと視線を戻し、呆れたように肩を竦めてみせた。


「要するに、俺が彼女にベタ惚れなんです。子供の頃から積み重ねてきた恋心は、あなたが思うほど軽くない」


最後にぴしゃりと言い放たれ、女性は顔色を失う。

彼女に対し興味を失ったかのように、恭介君は腕時計へ視線を落としてから、晶子先生へと顔を向ける。

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