妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
笑みを堪え切れないまま、彼と向かい合う。
話したいことはたくさんあるのに、思いばかりが膨らんでなかなか言葉が出てこない。
そんな私の頬に恭介君の長い指先が触れる。驚き目を見張ると、彼が柔らかく目を細めた。
「元気そうだ」
優しい眼差しと温かな指先に、胸が高鳴り出す。
学生の頃、恭介君は美男子として有名だった。
他校の女子にも名が知られていて、文化祭では恭介君が歩けば女子の大移動が起こるほど人気者だった。
綺麗な瞳やすっと通った鼻筋に形の良い唇。
彼がイケメンなのは十分すぎるくらい分かっているはずなのに、整った顔を久しぶりに目の当たりにしたからか、見つめ合うだけでどうしようもなく恥ずかしくなる。
ぎこちなく視線を泳がせると、恭介君の手がすっと離れていった。彼の気まずそうな様子に気づいて、私は出来るだけ明るく会話を続けた。
「うん。元気でやってるよ。恭介君は忙しいんでしょ? お兄ちゃんが、アイツは超多忙で食事の約束すら取り付けられないって嘆いてたから」
そう言葉を返すと、恭介君が困ったように微笑んだ。