妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
きっと一緒に歩いて帰りたくて、前もって自宅駐車場に車を置いてきたのだろう。
そう考えると手を出して待っている彼が可愛らしく見えてくる。
断る理由はもちろんない。私は微笑みながらその手に自分の手を重ね置いた。
軽く手を握り合いながら自宅マンションに向かってのんびり歩を進めていく。
「ねぇ。どれくらい見合いの話が来てたの? 二、三人?」
「あぁ……。まぁ、そんな感じ」
言葉を濁しつつ目をそらした恭介君の様子に、ついついふくれっ面になる。
「お見合いの話、たくさん来てたみたいだね。妬けちゃう」
「バカ。いくら話がきたって関係ないだろ。俺が結婚したい相手は決まってたんだから。……でも、妬いてもらえるのは嬉しいけど」
言いながら、彼が覗き込んでくる。赤く染まっているだろう顔を見られたくなくて、今度は私が視線をそらした。
そんなやりとりをしつつも、繋いだ手はしっかりと繋いだまま。
穏やかな気持ちで家路を楽しむ中、恭介君がぽつりと囁きかけてきた。
「初っ端からミーティングだったから、気疲れしただろ?」
「それなりには。でも、叔父さんのことに触れてくる人もけっこういたから、もしかしたら私より相手の方が気を遣っていたかもしれない」