妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「ピアノの先生が子供の頃からの夢だっただろ? まだその夢を諦めていないのなら、しばらくは自分の時間を夢を叶えるために使うべきだ。学びたいなら音大に入学したって構わない。美羽をサポートする準備はできているから」
私が夢を諦めきれていないのを恭介君は気付いていて、力を貸してくれようとしている。彼の優しさが背中を押してくれたのをしっかりと感じ取った。
「学校が忙しくなりそうなら、時間があるときだけ母さんのところにアルバイトをしに行ったらいい。音楽スクールから学べることもあると思うからな」
彼の考えに触れて、感謝の涙がこぼれ落ちた。
アザレア音楽スクールのイベントに誘ってくれたことも、仕事を辞めて晶子先生の教室で働くことを提案してくれたのも、きっと全て今この瞬間に繋げようとしてくれたのだ。
再び進むことなどないと思っていた道を、恭介君が用意してくれた。
事務の仕事もやりがいはあるだろうけど、やっぱり私はピアノの先生になりたい。
今日一日、アザレア音楽スクールで働いて感じた思いはそれだった。