妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「なんだか面白い面子だわ。あの人、若いふたりの話についていけるのかしら。それとも私が聞いたのはただの予定だったのかも。それならきっと恭介に断られるわね。ひとりで夕ご飯ちゃんと食べられたかしら」
私とは違った考えを展開させながら、晶子先生が妻の顔になっていく。
気になったら確認せずにはいられないようで、お義父さんに電話をかけては「出ないわね」と不満げにスマホを睨む。
晶子先生がやきもきしている間に、タクシーは私と恭介君が暮らすマンションの前に到着する。
「今日はありがとうございました。すごくためになりました」
「こちらこそ、とっても楽しかったわ。それじゃあ大和ちゃんによろしくね。おやすみなさい」
笑顔で言葉を交わしてタクシーを降り、私は晶子先生へと手を振った。そして、タクシーが視界から外れるまで見送ってから、ゆっくり歩き出す。
もしかしたら、なにか買って帰るべきだっただろうか。
お酒を飲みながら語り合うふたりの姿と共にそんな考えが浮かんだ時にはもう、私はエレベーターの中だった。
とりあえずエレベーターを降りてはみたものの、どうしようかと迷って足が止まる。